【tdr0886】ドナルドの後継秘話~初代声優が託したドナルドの声~

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1934年に上映された「かしこいメンドリ」でスクリーンデビューを果たしたドナルドダック。その声を初めて吹き込んだのは「クラレンス・チャールズ・ナッシュ」、オクラホマ州出身の小柄な男性でした。

元々ロサンゼルスのラジオ局で働いていた彼でしたが、この作品でドナルドを演じて以来、1985年までドナルドを演じ続け、180以上もの映画に出演しました。

このため、彼は『ダッキー』と親しい間では呼ばれていたそうです。

そんなクラレンス亡きあと、後を引き継いだのが当時18歳の少年「トニー・アンセルモ」でした。その若さにも驚きですが、実は彼は声優ではなく、ディズニーに所属するアニメーターだったのです。

「ディズニーに入社したい」という思いから、アニメーターとしての勉強に励んだトニー。16歳でドナルドの多くの短編映画作品で監督を務めた経験の「ジャック・ハンナ」などに師事を受け、3年間作画技術を学んだあと、ディズニーに入社しました。

そして入社初日、思わぬ出会いをします。

たまたまアニメーション棟から出てきた見も知らぬ、158cmくらいの小柄で白髪の男性から「おはよう!」と声をかけられたのですが、その声が明らかにドナルドダックだったのです。

そう、これこそがトニーとクラレンスの初対面でした。

その後、トニーとクラレンスは友人関係になり、遊び感覚でドナルドの声マネを本人の前で披露するようになりました。

初めは声すら出ず、お世辞にも似た声を出せませんでしたが、シャワールームや車の中などで練習しているうちに上達し、クラレンスに披露すると「それでいい」と評価を受けるほどに成長しました。

とはいえ、この時点ではまだ声を似せているだけで、ドナルドの個性や心理などは全く理解していませんでした。

そして、死去する半年前・・・クラレンスは度々トニーの仕事場に訪れては「ドナルドの心理クイズ」を出すようになりました。こういうとき、ドナルドならどう思うか、どういう声を出すか・・・など、心理的な面でドナルドの理解を深めようとしたのです。

このとき、トニーはクイズ自体楽しんでいたものの、何故クラレンスがこのような問題を出すのか理解していませんでした。

そうして時が過ぎ、ドナルドダック生誕50周年のイベントでクラレンスの姿が無かったことを心配したトニーは、クラレンスの妻から白血病で入院したことを知らされ、急いで病院へと向かいました。

その病室でクラレンスは「ドナルドの声を頼む」とトニーに言いました。

クラレンスは「自分の後にドナルドの声を任せられるのはトニーしかいない」と考えていたのです。トニーはその言葉に「生き続けてくれ」と答えましたが、その想いは叶わず、クラレンスは白血病でこの世を去りました。

クラレンスは自分の余命が間もないことを理解したうえで、自分の後継者を育てるべく、トニーにドナルドの心理クイズなどを出していたわけです。

そして、本人いわく「成り行き」で引き継ぐことになったトニーは悪戦苦闘しながらドナルドの声を演じ始めました。

余談ですが、ドナルドの特徴的な怒鳴り声は相当の労力を要すらしく、その辛さからトニーは「ダッキー(クラレンス)はこんな大変なことを楽にこなしていたっていうの?」とジャック・ハンナに聞いたことがありました。

それに対しジャックは「とんでもない、それどころかたまに気絶していたさ」と答えたそうです。

ドナルドの声を長い間演じていたクラレンスでさえ、たまに気絶するとは・・・。

その高難度の声を任せるほど、クラレンスはトニーを認めていたのですね。

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