【tdr1823】冒険家に憧れたベアトリス・ローズ・エンディコット

“ニューヨーク市保存協会”を設立し、ホテルハイタワーを保護した「タワー・オブ・テラー」の物語の中枢人物ベアトリス・ローズ・エンディコット。

U.S.スチームシップカンパニーの社長コーネリアス・エンディコット三世を父に持つ七姉妹の末っ子である彼女は、幼いころから父親に反発し、父がライバル視するハイタワー三世に憧れを抱いていました。

その憧れが後のホテルハイタワー保護への動きへと繋がるわけですが、一体何故彼女はそこまでしてホテルを守り、ハイタワー三世を尊敬するのでしょうか・・・?

そしてなぜ、父と対立する道を選んだのでしょうか?

その理由は、過去に特設サイトで公開されていたベアトリスの日記に記されていました。

一冊の雑誌
ベアトリスがハイタワー三世に強い憧れを抱くようになったのは1897年2月2日。

まだ14歳のベアトリスは父に会いに来たマンフレッド・ストラングと出会います。

マンフレッドは持っていた雑誌を差し出しながら、「ハリソン・ハイタワー三世の弱みを掴んだ!」と熱心にコーネリアスに訴えていたのですが、このとき「ハイタワー三世 真実の冒険物語」という雑誌を落としました。

本には“象に乗った髭の男”の絵が描かれており、この絵を見たベアトリスはホテルハイタワーのオープンパレードで見たハイタワー三世だと気付いて雑誌をこっそりと持ちだしてしまいます。

屋根裏の秘密の場所で夢中になって冒険物語を読んだベアトリス。これまでに読んだどんな歴史の本よりも面白いと感動し、「この雑誌を一生持っていよう!」と古いトランクの中に隠しました。

エレベータ事故を目撃
1899年12月31日、ベアトリスは屋根裏の窓のそばで新年のカウントダウンを眺めていたとき、突然ホテルの電気がすべて消え、最上階の窓が緑色に光り、ホテルを貫いて下に落ちていく様子を目撃。

1900年1月3日の日記ではハイタワー三世の失踪を知り「私の大好きなハリソン・ハイタワー三世はどこへ行ってしまったの?」、「彼がいなくなるなんて、わたしはこれからどうしたらいいの?もう、彼の新しい冒険物語を読むこともできなくなるのよ!」と強いショックを受けます。

アーチーとの出会い
それから8年後の1908年10月21日、公園でホテルハイタワーのスケッチをしていると汚い山高帽につぎはぎだらけのコートを着たおじいさん“アーチー”と出会います。

元ホテルハイタワーのコック助手だという彼と意気投合したベアトリスは、ホテルへの愛情を語り合い、彼からホテルハイタワーの詳細な話を聞くようになります。

父への打診と裏切り
1911年4月15日、ベアトリスの誕生日パーティーが行われた日の夕食後、ベアトリスは「S.S.コロンビア号就航に合わせてホテル事業に手を広げよう」とアーチー発案の“ホテルハイタワー買収計画”を父に話しました。

港に近いホテルハイタワーを使わない手はないと訴え、ホテルの土地権利書を買い取ろうと勧めたのです。

ホテルの土地権利書は当時複数の人間が持っており、どれが本物か解らない状態でした。そこで彼女は小さな不動産会社を隠れ蓑にし、全部買い取ろうと言ったのです。

ホテルハイタワーの話題に怒っていた父は話を聞き終えると「それでこそ私の娘だ」と抱きしめ、この話に乗りました。

しかし、父コーネリアスは水面下で娘を騙そうとします。

ベアトリスに「買収計画が成功しなかった、数人の所有者が売却を拒んだ」とうそを言い、権利書を全て買いしめていたのです。

そしてベアトリスにばれないよう、S.S.コロンビア号の内装や祝賀会のプロジェクトを任せて多忙にさせ、その間にホテルハイタワーを取り壊す準備を進めていました。

コーネリアスはホテルハイタワー跡地に「エンディコットグランドホテル」という新たなホテルを建てようと考えていたのです。

ニューヨーク市保存協会設立へ
1912年5月3日、父の本当の計画を知ったベアトリスは泣きながら家を飛び出しました。そして、公園で一夜を過ごすと隣にはアーチーの姿が。

ベアトリスは前日のことをアーチーに話し、取り壊しの計画をやめさせるために話し合いました。

そして出たアイディアが、ニューヨークの歴史的・芸術的価値の高い建物を保存する“ニューヨーク市保存協会”の設立です。

すぐさま家に戻ったベアトリスは1日かけて友人全員のもとを訪れ、歴史的建造物を保護する大切さを説きました。

そしてその日のうちにカールッチ・ビルで事務所を借り、1912年6月5日ニューヨーク市保存協会が超スピード発足したのでした。

長くなってしまいましたが、こうした経緯があったからこそ、ベアトリスは父と対立してまでもホテルハイタワーを守ろうとしているわけです。

彼女のすさまじい行動力も、ホテルハイタワーに対する熱意も、全てはハイタワー三世に対する憧れによるもの。

ただアトラクションに乗っただけでは解らない濃密なバックストーリーと言えますね。

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