【tdr0744】ドナルド主演のプロパガンダ作品「総統の顔」とは
特定の思想・行動を誘導するための宣伝行為「プロパガンダ」
戦時中は、どの国もプロパガンダを利用し、大衆の士気を上げていました。
アメリカも、プロパガンダを利用していた国の一つで、そのプロパガンダ作品をなんとウォルト・ディズニーが制作したのです。
その作品というのが、ドナルドダック主演の短編映画「総統の顔」
ドナルドシリーズ43作目として公開された約8分の作品で、1943年1月1日に公開されました。
物語はヒトラーが愛したというワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の曲から始まります。
朝早くからナチランド(ドイツをモチーフにした町)を行進する楽器隊。その面々は東條英機にヘルマン・ゲーリング、ハインリヒ・ヒムラーなど、アメリカが敵対する国の要人揃いで、町の至る所にはナチスのマーク「ハーケンクロイツ」が掲げられていました。
ドナルドはその町の簡素な家に暮らしていたのですが、その生活に自由はなく、眠っていたいのに無理やり起こされ、ヒトラーや昭和天皇などの絵に敬礼し、ナチスの軍服に着替えて、木のように固い食パン一枚を食べたら、今度は兵器工場での強制労働という酷いものでした。
しかも、1日48時間のシフト制による砲弾生産という過酷きわまる労働環境で、作業中は聞きたくもないヒトラーを称えるプロパガンダの放送を聞かされる始末。そんな中、銃弾などの兵器製造という状況に耐えられなくなり、遂には空想の世界に逃げ込んでしまいます。
しかし、実際は全てドナルドの夢。
ドナルド自身は星条旗のパジャマを着て寝ていただけだったのです。そのことに気付いたドナルドは改めてアメリカ国民でいることを心から喜び、エンディングとなりました。
たった8分という短さでありながら、誰が見ても明らかなほどプロパガンダ色の強い作品となった「総統の顔」
ウォルト自身、第一次世界大戦中に赤十字救急部隊への志願をしたほど、愛国心に満ち溢れていましたから、敵国を蔑視するような作品が出来るのも頷けますね。